シナリオ

ラヂオドラマ 『豹マン』

☆豹マンとは!
 会社のため、社会のため、一切疑うことなく働きづめだった優秀な会社員、赤羽豹磨。
 しかし、その勤め先は完全なるブラック会社。同僚であった豹磨の親友は過労により自殺してしまう。
 怒りと哀しみから社長室に抗議に乗り込む豹磨。
 しかし、そこで見たものは世界中のブラック企業を牛耳り、人間社会をコントロールしようという悪のコングロマリット、クリスタルどくろの幹部たちであった。
 真実を知ってしまった豹磨は、クリスタルどくろの手により瀕死の重傷を負ってしまう。そのとき、死んだ親友の父親である孤高の科学者、高円寺博士の手により復活する。
 こうして、社会と文明の裏に潜んで悪事を働くクリスタルどくろを打倒する、正義と言うの名の復讐者、超人豹マンは誕生した。
 ―― 自分から大切なものを搾取した“世間”に対して、豹マンは叫ぶ。
「弱肉強食っ!」と。



第XX話
<シノプシス>

 社員の定着率が悪いことで有名な会社「キャッチ アンド リリース」。今日も終わるあてなきデスマーチを続け、社員がまたひとり辞表を出していた(公務員試験を受ける気らしい)。
 そんな矢先に、赤羽豹磨と名乗る男が派遣社員としてやってくる。



 C&Rの社員はみなが死人のように働いているだけで、豹磨がどれだけ話しかけようと異常な反応しかない。とまどう豹磨に、同じく派遣OLである日暮里ポリ子により、C&Rはブラック会社であることを教えられる。
 ポリ子は覇気も人間関係も希薄な職場の人間たちを紹介していく。
 完璧なブラック会社のブラック社員たちを眺め、豹磨は呟く。
「このブラック体質、……そっくりだ。あの時、自分が豹マンと化したあの職場に!」
「それでは、これはまさか! クリスタルどくろの仕業か!?」

※C&Rの社員たち
・やたら転職を考えている世間知らずなゆとりな若手(通称ゆとリン)。
・かつてモーレツ社員で片付けられたクラッシャー上司、暮下課長。
・スマホを手放さず、もはや本体がどっちかわからない端間(通称スマホさん)
・能力が異様に低い古参技術者、平田。
・IT成金、セレブライフに憧れ、アフィリエイトのことばかり考える及川(ツバサくん)
・ノイローゼで自我崩壊寸前の文久さん(モンクさん)
・気力ゼロ。目立ちたくない。責任を負いたくない。依存的。自分に自信が持てない。
だけど自意識は高く、他人と関わりたくない。喋り出すと止まらないなど自己主張もしたい。
そんな男、笹塚。



 豹磨の部署は追加予算なし、増員なし、時間的余裕なしのデスマ案件を抱えていた。
 さっそく仕事に取り掛かるも、豹磨はその無茶苦茶なプロジェクトに極めて常識的疑問を口にする。だが、返ってくるのは「どうにもならない」という諦めの声ばかり。
 探偵に憧れる世間知らずの厨二病社員、那須塩原は「まあまあ、赤羽さん。そんなに張り切らないで。次の職場までの足掛けで、適当にやればいいんじゃないっすか?」と言うと、豹磨は優しくも、はっきりとそれを否定。
「正しく生きようとする努力が報われないなんて絶対におかしい。そんな理不尽に負けたら駄目です!」
 そう言って、豹磨はその隠された高学歴と取得資格で、次々と業務をこなしていく。
 こうしてポリ子たちの驚嘆をあげるなかで、ついには案件終了まであと一歩のところまで漕ぎ着る。
 しかし、歓喜と安堵の声が上がり始める矢先、なんと取引先からの突然の仕様変更の通達がくる。
 あまりの仕打ちに、せっかく盛り上がっていた豹磨の部署は再び落胆の色に染まってしまうのであった。



 しかし、あまりにおかしな仕様変更に疑問を抱いた豹磨は、秘密を探ろうと社長室を訪れる。と、そこへ会社の社長と取引先の担当者と思しき人物が入ってくる。
 自分たちしかいないと思っているふたりは、今回の仕様変更が末端社員たちをひどく苦しめることを知っていながら、自分たちの利益しか考えていないと解っている発言をする。
 それを聞いて、経営者としての正気を疑う豹磨。さらに様子をうかがっていると、社長が中座したことに油断した取引先が、その正体を見せるのであった。



 赤いラインを五本の緑のペンで書けというトンデモ依頼がなされている仕様変更会議中、豹磨が乗り込んできて、その問題点を極めて正論で指摘しまくる。
 怒声を上げる社長と取引先(クリスタルどくろの幹部)。しかし、その様子はポリ子の持っていたiPhoneによりツイキャスされていた。
 自分たちのことを顧みない上層部の仕事の受け方を知った社員たち。不満と抗議の声をあげる。
 追い詰められた社長がたじろぐ。だが、それを押しのけて取引先の担当者は社員たちに向かって、「ここを辞めてお前らに行き場なんてあるのか? テキトーに大学を出てれば就職できると思っていて、何の資格も経歴もスキルもないお前らに!?」と叫ぶ。
 担当者の言葉に、社員たちはいっせいに反論の言葉を失い、誰もが俯いてしまう。
 このピンチに、ポリ子はあわてて最後の望み、豹磨を探すがどこにも見当たらない。



 社員たちを仕事に戻らせ、人払いしたなかで高笑いをする取引先担当者。
「しょせん、戦後の似非民主主義教育で洗脳された団塊ジュニア以降なんぞ、与えられたレールの上を黙って歩くことしかできない。まさにデスマーチがよくお似合いだ。いつまでも年金配布と終身雇用制が続くと信じているがいいさ。ふははははっ!」
 その時であった。
「そこまでだ、クリスタルどくろめ!」
 担当者が振り返るその先に、赤いマントをはためかす豹マンの姿があった。


 突如姿を現した豹頭の男に驚く担当者に、豹マンは言い放つ。
「福利厚生を無視し、労働基準法の穴をつき、不況と与党の無能ぶりを利用する悪魔どもめ。貴様らの野望はここまでだ」
 最初はとぼける担当者だが、豹マンの必殺毛針でその正体を暴かれる。
 なんと担当者の正体は、日本の企業をブラック化させて世間に混迷をもたらそうとする悪の秘密結社、クリスタルどくろの怪人だったのだ。
 観念したクリスタルどくろの怪人との一騎打ちが始まり、死闘の末に、豹マンは必殺技を決めて、怪人を倒すのであった。



 職場では、豹マンの戦いとクリスタルどくろの存在を知らぬ社員たちが目の前の残務にため息をついていた。
 と、その時、問題の仕様変更が撤回されたという報せがもたらされ、全員が歓喜の声をあげる。
 こうして訪れた平穏を前にして、かつてのブラック社員たちは、今回の件で自らのおこないを反省する
「これからは仕事するふりの残業を止めます」
「何も決まらない会議を止めて、担当者を決めます」
「家庭でも、自分ができなかった夢を子供に押し付けるのは止めます」
 ようやく活気が戻った職場で、ひとりポリ子は豹磨の机の上に辞表が置いてあることに気づく。そして、この事件を解決したのは豹磨だったのでは? という想いを抱くのであった。


<了>

~キャスト~

○赤羽豹磨/豹マン
○日暮里ポリ子
○那須塩原

○C&R社員A
○C&R社員B
○C&R社員C
○C&R上司


○クリスタルどくろ・怪人/取引先担当者
○C&R社長

◎ナレーション部分
○高円寺博士
○高円寺一
○うしお社長
○クリスタルどくろ・首領
○クリスタルどくろ・幹部

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